黒木町日記

実家のある福岡県の黒木町。2010年2月1日をもって、
八女市に吸収され、名前も聞く機会もめっきり減りました。
ちなみに、管理人は東京都暮らしを経て長崎県在住です。
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今日見た夢のおはなし〜オリンピックに触発されて〜

天国で集団相談会を催していました。

テーマはどうやってお友達を作るか。

 

天国で、お友達がいない方にお越し頂いて、それぞれの課題を聞きました。

私からどうやったら良いかなどは一切語らず、本番である一次会は終了。

懇親会でお酒を酌み交わし、参加者それぞれで交流をしました。

宴もたけなわになってから私は発言させてもらいました。

「これこそ、唯一お友達を作る全ての術です。

どんどんお茶を飲んで語り、ご飯を食べあって、お酒を酌み交わしましょうと」

参加者の皆さんは、満足げに帰路につかれました。

 

次に、天国にある企業さんの相談に応じていました。

「売り上げが上がらない、どうしよう?」

経営者の方が、私に悩みを打ち明けられました。

私は返しました。

「本当に売り上げが一番大事なのでしょうか?

どうして社長はこのお仕事をやっていらっしゃるのですか?」と。

経営者さんは、会社をやっている本心を語って下さいました。

「だったら、売り上げが上がろうと、下がろうと、

その想いをただひたすら実現すべく働きましょうよ、その後に結果はついてきます。」

そう私はお返事しました。

 

私は、目を覚ましてちょっと考えましたが、

きっとこれは私が、オリンピック結果の影響下にあるんだろうなと。

 

フィギュアスケートで銀メダルを獲得した宇野選手は

オリンピックだからといって特段の緊張はなかったと発言されていました。

彼は、練習からある大会に臨むにあたり、自分自身が思う滑りを

ただひたすら実現したいと願って、その時その時に向き合っているのでしょう。

その試合がオリンピックであれ、国内の大会であれ。

 

ノーマルヒルスキージャンプの選手は、平昌の強風に阻まれて

難しい競技を余儀なくされたと放送で解説されていました。

しかしながら、成績上位者はほとんどがワールドカップでの上位選手でした。

つまりは、どんな大会であっても実力を発揮できる選手です。

 

スポーツ選手であれ、一般の人であれ、自分という存在が確立していれば、

周囲に惑わされることなく人生を一歩一歩進めていけるはずです。

人間誰しも、自分自身で置かれた境遇を納得できる訳ではありません。

他者の意見を踏まえ、自分の言動を納得させながら日々を暮らしていくのだと思います。

だからこそ、必要なのは自分のことを想ってくれる友達なのです。

 

経営者は会社では孤独な存在です。

従業員さんの生活を維持するために、

あらゆる外部・内部環境と向き合っていかなければなりません。

だからストレスも溜まります。

けれども、いろんなところで会社の愚痴を言ってしまうと、

その会社の評価は下がり、自分自身の首を絞めることになります。

だからこそ、信頼して口を割らない無二の親友に悩みを打ち明け、

その場で辛いことを流して、原点回帰する時間が非常に大切です。

 

日々のニュースを垣間見るとあまり嬉しいことがないと感じる日本において、

オリンピックでメダルを取る選手の姿は、非常に清々しく希望を与えてくれます。

しかしながら、スピードスケートの小平選手をサポートしている

所属先の相沢病院のように、選手に理解ある環境がある状況に置かれた選手はきっと一握りです。

オリンピックに出場できる選手の多くは、日々の生活も汲々としているはずです。

それはメダルを獲得した後もそうかもしれません。

 

けれども、自分が信じた道をひたすらに進んでいくからこそ、道は切り拓けるのです。

それを信じてくれる友達に支えられながら。

 

なんてことを思わせてくれた夢のおはなしでした。

 

ツラツラと失礼しました。

印象に残った夢だったので書き連ねてみました。

(写真は樹齢3000年の武雄の大楠です。生命力が漲っています)

 

JUGEMテーマ:モチベーション

加藤清正 海音寺潮五郎著 読了。-熊本城から見えてくる領民を想う殿様像-

先日、熊本城に行く機会がありました。

そこでボランティアガイドさんに、

熊本城の建造物や、その創建の歴史を伺いました。

60代過ぎのガイドさんは、ひらすらにこの城を築いた

加藤清正という人物を褒めたて、

今の熊本にとってなくてはならない人だと絶賛していました。

 

どんな地域でも、地元の人に尊敬されている方がいますが、

果たして、その土地の民衆にとって賞賛を得るだけの施政者がいるのか、

常に疑問を持っている私であるので、

加藤清正公とは、どんな人物なのか知るべくこの小説を手に取りました。

 

最初に結論を書くと、非常に人間味に溢れた施政者であったことは

紛れもない事実のようです。もちろん、多くの弊害も生み出していますが。

彼は、豊臣秀吉によって世に出された人物であったので、

終生その恩を忘れることなく、次の天下人となった徳川家康に対しても、

豊臣家の安寧を願う戦国大名であり続けました。

 

 

この小説の主人公はもちろん「加藤清正」であるが、彼が仕えた豊臣秀吉について、

多くのページが割かれている。以下は有名な賤ヶ岳の合戦に向かう時のシーン。

 

ーーー

前者に向かって、大音声にさしずする。

「汝らは大急ぎで長浜に走り行き、街道筋の町々村々からあるかぎりの松明を出させ、

在々の百姓らをくり出させ、その松明に火をともして、街道に立たせよ。それ行け!」

 

ぱっと徒士らは走り出した。

のこった三十人組の前に立って、また叫ぶ。

 

「汝らも長浜に足のかぎりに走り行き、長浜領内の村々にふれをまわし、

庄屋、大百姓どもの蔵をひらかせて米を出させ、飯を炊かせよ。

炊きあがったならば、空俵のあと先はそのままにして、

中ほどを切りあけ、中に濃い塩水をそそいでよくしめてから飯を入れさせ、

牛馬の背につけて、街道を賤ヶ岳に向かって持ち行かせよ。まぐさも用意させよ。

これには糠を混ぜて、やはり俵につめて持ち行かせよ。

飯の俵との見わけのために、木の枝か紙のしべをつけさせておけ。

 

わしが軍勢ども、途々わしにつづいて駆けて行くこと故、

ずいぶん飢え疲れる者が出るであろうが、それを見かけたなら、

これは飯でござる、これはまぐさでござると教えて食べさせてよと言えい。

奪い取ろうとするものもあろうが、その時はかまわず奪いとるにまかせよと言えい。

着物になりと、手拭になりと、包んでお持ちあれと教えて取らせよと言えい。

このために行った米もまぐさも、あとで十層倍にしてわしがとらすと、

よく言い聞かせよ。それ行けい!」

ーーー

 

これは、豊臣秀吉が天下統一を図ろうとする最も盛んな時期である。

戦国時代当時、戦争の手段を教える術として書物なく、

すべて上に仕える武将の指図によって、人心掌握術を学んだ。

 

加藤清正は、秀吉の母の従兄弟の息子である血縁者であり、

秀吉の出世とともに、戦国時代実力によってその地位を挙げた。

だからこそ、秀吉が主人である織田信長の心を掴み、

その評価を得ようと如何に虚心坦懐に働いたかをつぶさに観察した。

 

結果として、秀吉亡き後に徳川家康が天下を支配することも予見し、

自らの存在がどのように評価されるのかを十二分に理解し行動を行った。

 

また、秀吉が自らの境遇が卑しい身分の出身であり、

農民の生活を土台に国作りを考えたことを参考にして、

常に現場主義で、戦場でも平時でも、

最下層の民の気持ちを汲み取ろうと努力し続けた。

 

 

加藤清正最大の失敗は、秀吉が命じた朝鮮出兵の先鋒として、

泥沼化した朝鮮での征伐軍をあくまでも主戦論者として強行した点にある。

以下は、小西行長が相手に和平交渉をする中で、

逃亡していた国王の兄弟を捕まえようと同僚大名に相談する場面である。

ーーー

「ことさらめかしく申すまでもなく、

戦さというものは戦う者の力量以外に

運不運のともなうもので、いかに力量あり、勇敢なものだとて、

必ず人にまさった手柄を立てられるとはかぎらぬものでござる。

されば、運の向いている時には、

気力を励まして強く追いかけるべきものでござる。

両王子がこの町を通って奥地へ参られたとは、われらに手柄立てよとて

天のあたえ賜った好運でござる。

飽くまでもこれを追求するこそ、武人の心掛ではござるまいか。」

 

鍋島は盃をふくんで一口のんで言う。

 

「加藤殿の仰せ、一応道理とは存じますが、異国の者はなかなか心が強く、

はかりごとが多いとうけたまわります。

餌にかけて人を遠く切所にさそいこんでおいてぐるりと取巻き、

わなに陥れるような戦さをすること、

昔からめずらしくないとうけたまわっています。

あの建札も、あるいは餌の一つかと疑わしく思います。

もしそうなら、不覚を取ることになりましょう。」

ーーー

もちろん、局地戦としては加藤清正が率いる軍隊は

対峙した明軍に対して、大きな戦績を収めたことは事実であるが、

海外での長年にわたる出兵で、多くの従軍兵士が命を落とし、

国力を減じたのが全体の結果であり、

その時に双方の対立を招いてしまった結果として、

400年以上が経過する今でも中国・朝鮮半島と日本の間で、

決して良い関係が築けていない遠因にもなっている。

 

このような朝鮮半島と日本の間に、

大きなしこりをもたらした朝鮮出兵ではあったが、

加藤清正は、朝鮮で収穫も得ていた。

 

高い技術を持っている石工、瓦工、陶工を熊本に連れてきて、

領国経営になくてはならない土木工事の技術を高度化させることに成功した。

河川工事、海岸防波堤工事、熊本城築城など、現代もその建造物が残っている。

2016年に熊本市近郊で起きた熊本地震によっても、清正時代に建造された

熊本城関係の施設は、再建された施設とは違い原型を留めていたそうである。

 

最後に明記しておきたいのは、

加藤清正は儒学に目覚めた初期の大名でもあった。

関ヶ原の合戦が終わり、江戸に徳川家康を尋ねた際、

林羅山から論語の講義を聞き、すぐに共感を覚え、学問を始めることにした。

戦国大名ばかりであった周囲が、変わった趣味だとバカにする中で。

たまたま石工として熊本に連れてきた朝鮮人の中に、

儒教を学ぶものを見つけ近習として身近に置き、

土木事業の指図の傍、日々論語の研究をするようになった。

 

清正はたたき上げの戦国大名ではありながら、

これからの平穏な時代を率いていく武士には、

学問が必要なことを十二分に認識していた施政者でもあった。

 

 

私が、加藤清正という人物に興味を持ったのは、

彼が建造した熊本城の石垣が400年以上経っても

崩れなかったという現実を直視したからです。

 

この小説にも以下の記載があります。

善政という者は、当座は大いに有難いが、

形としてはのこらない。

時が過ぎ、人の代がかわると、忘れられるのである。

 

熊本藩を加藤家が率いたのは2代44年に過ぎず、

細川家は239年に渡って多くの民衆が

文句を言わない程度の善政を敷いたにも関わらず、

現在の市民も加藤清正に対する尊敬の念が大きいのは、

形に残るものを数々築いたからに他なりません。

 

加藤清正という人物の足跡をたどることは、

日本における政治というもののあり方を考えることかもしれない。

決して論理的に書かれたとは言えない歴史小説から、

与えられた刺激は、私にとって非常に大きなものでした。

 

今年最後の読書に相応しい作品に出会えました。

是非とも、熊本城が再び煌びやかな姿に復活することを祈ります。

JUGEMテーマ:自分が読んだ本

読書 | 00:58 | comments(0) | - | - | - |
ながよっさん、あちらの世界での「よいしょ業」は如何ですか?

今日は、ながよっさんの入院直前にたくさんの会話をされた

最後のムスメさん、Nagahisaさんとtaoにて会話してきました。

 

本人から、ながよっさんは髪色からシンパシーを感じられたと

聞きましたが、流石に素晴らしい目の付け所ですね。

 

彼女は、ながよっさんに会話した次の日に入った

飲食の道の入り口を卒業して新しい道を志向するとのこと。

彼女に、「君はDoではなくBeすべき」とアドバイスされた

ながよっさんの濃密な会話を的確に受け止めて、

2年間頑張った成果が出ているようです。

 

先日、ながよっさんのご家族から喪中のため、

年末年始のご挨拶をお控えさせていただきますとの

お葉書を頂戴しました。

 

気がつけば、ながよっさんをこの世から見送って、

間も無く一年が経とうとしています。

 

私は、ながよっさんからも多分に影響を受けた

政治の道をヨチヨチながら歩んでおりますが、

まだまだ選挙の際にアドバイスですら、現実に活かせていませんし、

多々話をさせていただいた、

世の人のために働くことの意義を十二分に感じて、

公な仕事ができているとは言い難いのが事実です。

 

もっとユーモアを磨けと散々忠告いただいた方面の

勉強は全くと言っていいほど進んでおりません。

たまには、寄席に行って思いっきり笑わなくてはです。

 

気がつけば、ながよっさんとお会いしてから、

すでに16年以上の月日が経過しました。

全く成長していない私ですが、間も無く子どもを授かります。

 

子どものままの私が、親になるのはおこがましい限りですが、

親になってからの成長する材料があると良い方向に捉え、

これを契機に、さらに社会を知って学んでいきます。

 

考えは全くまとまっていませんが、

どうしてもながよっさんのことを書き留めたい夜でしたので、

駄文をつらつらと綴らせていただきました。

 

また、子どもができたら、

墓参りにお伺いさせていただきます。

いつも、割子川公園を見つめているながよっさんを

思い出しながら、人生につまづいた方の

道しるべを示せるような大人になりたいと願い、

精進をしていきます。

 

今日も、沢山の気づきを与えていただきありがとうございます。

 

JUGEMテーマ:モチベーション

つぶやき | 00:56 | comments(0) | - | - | - |
China2049-秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」-マイケルピルズベリー著 読了。
評価:
マイケル・ピルズベリー
日経BP社
¥ 2,160
(2015-09-03)
コメント:中国とアメリカの今がどんな考え方で関係性を維持しているのか、根本的な点を知るためには非常に優れた著書である。今後の中国との付き合い方への指南も秀逸。

毎度、議会前の質問準備中に読書が進むダメな人間である。

 

自分自身をポジティブすぎず、ネガティブすぎずに制御する。

他者を恐れすぎず、接しすぎずに付き合う。

古今東西、どんな人間・組織にとっても非常に難しいことである。

 

マイケル・ピルズベリーはこの本「China2049」において、

中国を正しく恐れ、正しく敬意を払い、正しく付き合うには、

アメリカはどう振る舞うべきなのかを、

中国に対して自らはこれまで賞賛すぎていたと反省し、

事態の変化によってポジションを変えた結果として、

アメリカと中国について現状分析を踏まえて指摘している。

 

私は、三国志演義の物語についてはうる覚えだし、

アメリカが中国に対してどういった考え方で政治経済の

関係性を維持しているのか、この本を読むまで、

定まった見解は存在しなかった。

 

しかし、この著書を358ページまで読み終えて、

まず初めの感想は、中国の歴史を今一度学び、

それを日本の今後に役立てたいという率直な想いである。

 

世界で多くの人が認識している通り、

今や中国は世界的な経済成功を成し遂げている国である。

その影響下で、アメリカに変わって覇権を握ろうと、

世界中の国と同盟関係を結ぼうとしているのも事実だ。

 

第一次世界大戦以後続いてきた、

欧米の軍事的経済的成功国が、植民地支配を行う前に

中国やインドが世界的な覇者であった時代を

取り戻そうとする意識が、中国を突き動かしているという、

ピルズベリー氏の指摘は一見当たり前のようで、

案外見過ごしてしまっている大きな事実である。

 

日本に住む我々も、第二次世界大戦の敗戦国という自意識は低く、

中国や韓国、その他の国が日本という存在をどう見ているのか、

客観的に踏まえることができていない事実も、

その辺りに存在するのではなかろうか。

従軍慰安婦問題しかり、靖国参拝問題しかり。

 

「世界覇権100年戦略」という副題が示す通り、

中国は1949年の中華人民共和国建国100年を目標に、

アメリカに変わって世界の覇権国家となるべく、

様々な戦略を目に見えない形で遂行しているというのが、

マイケル・ピルズベリー氏が本著で訴える肝である。

 

その内容については本著を読んで頂く他にないが、

覇権を得ようとする中国にアメリカはどう向き合うべきなのかという、

本著最後の結論は、様々な教唆を読者に与えてくれる。

これは、中国とアメリカの関係だけではなく、

その間に挟まれた日本にとっても非常に有意義な指摘である。

 

著書のエッセンスを紹介するのはブログには適さないかもしれないが、

内容は本を読まないとわからないので、以下タイトルだけ示したい。

 

第一段階:問題を認識する

第二段階:己の才能を知る

第三段階:競争力を測定する

第四段階:競争戦略を考え出す

第五段階:国内で共通性を見出す

第六段階:国家の縦の協力体制を作り上げる

第七段階:政治的反体制派を守る

第八段階:対米競争的行為に立ち向かう

第九段階:汚染者を突き止め恥じ入らせる

第十段階:汚職と検閲を暴露する

第十一段階:民主化寄りの改革をサポートする

第十二段階:中国のタカ派と改革派の議論を監視し支配する

 

第十二段階の説明として、シンガポール建国の父と呼ばれる

リー・クアンユーが中国に対して冷静に分析を行っており、

その正しい予測の下で国を率いていたことを記している。

 

アメリカが第二次世界大戦を戦った時、

日本の文化について相当に研究を行い、

戦わずして勝つための布石を打ったことは知られている。

 

今、中国は同じように自国の数多の政争からの知恵を踏まえ、

どのように、目に見えない形で覇権を得ようかと、

敵になる勢力を冷静に分析しながら隠密に行動している。

もちろん、敵を油断させる派手な作戦を行いながら。

 

それに乗せられることなく、アメリカがどう行動するべきかを

説いた上記の12の戦略は、最も中国に乗せられているかに見える、

日本人こそ学ぶべき視点なのではなかろうか。

 

我が国は、有史以来文化を中国大陸から学んできた。

経済も社会統治の仕組みも、様々に影響を受けている。

 

今、改めて人間の生き方も現実社会に学ぶのではなく、

歴史を紐解いていけば見えてくる価値観が多いのではないか。

特に、日本と中国の関係性の歴史にこそ。

アメリカの戦略を指南する本でありながら、

日本人の今後にも大きく示唆を与える良著だったので、

ついつい駄文を連ねてしまった。

 

刊行後時間は経過しているが、一読に値する本であることは間違いない。

JUGEMテーマ:自分が読んだ本

読書 | 23:59 | comments(0) | - | - | - |
地方活性化の肝は今も昔も変わらず地域産業を築くこと。

私は、もう20年以上にわたって九州の片田舎から、

色々な地域を歩き回ってきた。

 

ご縁があって今は生まれた場所とは別の場所で、

街づくりのわずかな部分のお仕事を担っているが、

その過程で元気な街とはなんだろう?

そんな疑問を常にいただいていたような気がしている。

 

私が生まれ育った福岡県八女市は、

第二次世界大戦までは近隣から商品が集まり、

大きな商店街を形成していた福島地区に市庁舎が存在する。

それから70年以上が経過し、様々な取り組みによって

地域活性化の試みがなされたにも関わらず、

ずっとこの場所に住み続けられるだろうか、

不安な声を出している市民を至るところで耳にする。

 

一方、私が今生活している長崎県波佐見町において、

住民の皆さんと接していて、個々の地域において、

様々な不安を声に出されるけれど、

波佐見という町自体への不安の声は、八女市と比べて少ない。

 

その違いは、地場産業の存在である。

 

八女市には伝統産業として、提灯や仏壇、石灯籠やお茶など、

脈々と生業を営む事業者は存在する。

しかしながら、それらの産業に携わっている人の数は、

市民全体の割合のうち、非常に微々たる割合である。

 

一方で、波佐見町は400年以上にわたって窯業の町として続き、

社会の仕組みが大きく変わろうと、

江戸時代から現在まで日用食器を作り続けている。

もちろん、何度も廃業の危機にさらされながらも。

 

日本列島改造論から地方創生まで様々な掛け声のもとで、

都市から地方へ人材を戻そうとする国の取り組みが行われ続けて、

もはや40年以上が経過するにも関わらず、

東京を中心とした人口がこぞって地方に動く雰囲気は皆無である。

 

この大きな要因は、ただ一つ「仕事がないから」それに尽きる。

 

地方で高校時代まで生活していた学生が都市部に行くと、

仕事の多様さに驚くのが一般的ではないだろうか。

ニュースを賑わしているトレンディな技術用語を使いこなせる

企業が地方に本社を置くケースは本当に稀であり、多くは都市部に存在する。

 

私は、最近波佐見における地域活性化のこれまでをまとめるため、

書籍を作ろうとする方のサポートで、多くのキーマンと会話をしている。

初めにそれらの動きを始めた人から、

将来に向けた新しい動きを進める若者まで、

異口同音に口を揃えているのが、

波佐見に地場産業があることが強み」という点である。

 

ここでいう地場産業というのは、その土地を代表する産業に止まらず、

現実的に多くの住民が何らかの形で産業に関わっていることを意味する。

わかりやすく言えば、高度経済成長期に発展した企業城下町である。

 

企業城下町が、その命運を一つの企業に委ねられているのに比べて、

地場産業が支える町は、一つの企業がなくなっても、

新しい商品・サービスを提案する他の企業が牽引することができる。

 

 

常に変化し続ける生き物が築く時代が変化することは避けられない。

だからこそ、法人である企業も変化は避けられず淘汰も必定である。

それに乗っかる存在である自治体が変化せずにはいられない。

これは、長い時間財政再建に喘ぐ夕張市を例に出すまでもない。

 

地場産業が存在しない地域に地場産業を作ることは容易ではない。

そして、地場産業が存在する地域を次世代に繋げることも困難だ。

しかしながら、どこかで誰かが始めた産業があったからこそ、

今現在、全国・全世界で産業の恩恵を受けて、人々が営みを得ている。

 

この当たり前の事実を決して否定することなく、

自分自身が担える最低限のことを目一杯取り組んで行くことが、

必ず地域のためになり、ひいては自分自身のためになる。

 

その筋道を間違わないように、残り少ない今年を暮らし、

来年に向けた目標を立てていきたい。

波佐見焼急須

JUGEMテーマ:地域/ローカル

社会 | 11:25 | comments(0) | - | - | - |
技術者たちの敗戦 前間孝則著 読了。どうして日本組織は戦いに負けやすいのか?

私自身は技術者ではないし、
技術者と一緒になって働いたこともないけれども、
技術で世の中にないものを作り出そうとする人には、
非常に魅力を感じる。


何故ならば私には絶対にできないからだ。

ホンダジェットの開発についての著書を読んで、
ジェットエンジン開発者であったその視点の鋭さが気に入って、
前間氏の本を再び手にしてみた。


この本は、戦時中から戦後を生きた技術者たちに
前間氏が直接インタビューをしてその功績を綴ったものである。

 

三菱重工にて零戦を作った「堀越二郎」、「曾根嘉年」
C62蒸気機関車、そして新幹線を作った「島秀雄」
画期的な造船法を編み出し、後にNTTを民営化させた「真藤恒」
海軍にレーダー開発に携わり、後にNECなどで研究開発を率いた「緒方研二」
戦時中にジェットエンジンを試作し、後にホンダF1世界制覇を導いた「中村良夫」

 

これら6人の戦時中から戦後にかけた開発史と、
彼らが籍を置いた企業に関するエビソードがあふれた著作である。


ただ、事柄を淡々と紹介するだけではなく、
どうして彼らが世の中に知られるような物事を生み出せたのか、
その要因分析も明確で、現代社会に通じる考え方も提示されている。

 

それぞれのエピソードを紹介するときりがありませんので、
技術者について、もっとも本質的な指摘をされている部分を引用し、
前間氏の問題意識の一端をご紹介したい。

 

(以下、第4章「なぜ日本の「電探」開発は遅れたのか』より引用)

現在でもそうだが、基礎研究段階を経て
実用的な製品開発へと向かう過程でよく問題となることがある。
それは研究と具体的な製品開発とは仕事の性格が異なるということだ。
それだけではない。

 

基礎研究を担う研究者と製品開発(モノづくり)を
担当する技術者の性格も得手不得手も、能力の発揮の仕方も、
重きの置き方もまた、不思議なほど異なるのである。

 

乱暴にいってしまえば、研究者は理論的、原理的あるいは
現象的なことそのものには興味をもつが、
そこで発見された新しい成果を利用して、具体的な製品をつくるとか、
チームでまとめあげるといった実用化の作業となると、
あまり興味を示さない場合が少なくない。

 

もっといえば、抽象的で空想的なことを思いめぐらせて、
計算したり実験したりして理論を明らかにすることは好きでも、
生産設備を使ったりして実際に具体的なモノづくりのため、
チームワークを尊重して、まとめあげる段階になると
とたんに興味を半減させ、また不器用で、
機転が利かず、なかなかうまくいかない場合が多いのである。

 

その人のもともとの性格もあるだろうが、
仕事が人間をつくっていくというか、
いつの間にか仕事に対応した性格を身につけてきて、
興味の対象や重きの置き方のちがい、
それに勘の働き方や得手不得手がどうしても出てくるのである。

 

このため、両方の資質を兼ね備えている人物は少なく、
餅は餅屋に任せるべきであるというのである。

ところが往々にして、これがなかなか難しい。
バトンタッチする時期が、早すぎても遅すぎてもいけない。

 

その時期を誤ると、結果として開発が遅れたり、失敗を招いたりする。
だから、研究者と開発技術者との役割分担、
あるいは前者がいつの時点で製品開発を担う後者にバトンタッチするか、
そのタイミングが重要であるといわれている。

(引用終わり)

 

電探というのはレーダーのことであり、
アメリカやイギリス、そしてドイツと比べても、
第二次世界大戦中の日本軍のレーダー技術開発体制は
著しく遅れていて、戦局の明暗を大きく分ける結果となった。

 

航空機による攻撃が中心になったことイコール、
レーダー探知技術が発達しているからこそ、
遠隔地に対して効果的に爆撃を行うことができる。

そんな今となっては当たり前の事実であるが、
戦時中の日本軍は、頭脳の追求を求める体制を作ることなく、
とにかく敵に向かって攻撃を行えば良いという
「攻撃は最大の防御」という思想に囚われすぎていた。

 

もちろん前提としては海軍、陸軍の研究連携ができていない、
研究所での想定過程と現場での運用過程の連携ができていない等、
様々な要因はあれども、虚心坦懐に勝つためにはどうすれば良いか、
その冷静さを欠いたまま闇雲に戦争を行なっていたことが、
最大の電探開発の遅れ、そして敗戦の要因であるようだ。


時は、それから70年以上が経過し、
現在は戦時下ではないし、日本が積極的に他国との
戦争に足を踏み入れることはすぐにはないだろうが、
周辺には武力で領土維持を図ろうとする国が存在している。

 

ミサイルが飛んでくる可能性がある現実に、
安全な建物に避難してくださいと対処療法的に政府が呼びかける現実を見て、
レーダー探知の失敗事例を嗤うことができるのだろうか。

 

我々日本人は、感情論によって物事を判断する時、
多くの場合は、痛い目にあってきた歴史を何度も繰り返している。
いや、別に日本人に限らず人間が形成する組織はそうかもしれない。


もう少し、客観的なデータを重んじて、
自らの創造性を信じ、他国との開発競争を乗り越えようと奮闘する
技術者、科学者の声に耳を傾けようとすることが、
改めて日本人の底力を発揮するために必要なのではないか、
前間氏のメッセージは、私の胸にとても強く響くものであった。

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評価:
前間 孝則
草思社
¥ 886
(2013-08-02)
コメント:あの国は独裁国家だ、そうレッテルを張る前に、冷静にミサイルを開発する仕組みを研究することからしか戦争は防げない。それをこの本は伝えてくれる。

読書 | 00:57 | comments(0) | - | - | - |
企業トップのデザイン観 浜野安宏著 読了。
評価:
浜野 安宏
講談社
---
(1985-06)
コメント:中内功さんの功績については今となってはダイエーの失敗ばかりが目立ってしまうが、改めて流通業界を大きくリデザインした人物だということがこの対談で明らかになっている。古くても読む価値がある良い対談集である。

浜野安宏氏との対談者(肩書きは昭和60年6月刊行当時)

 

大賀 典雄氏(ソニー株式会社代表取締役)

佐治 敬三氏(サントリー株式会社代表取締役社長)

松下 正治氏(松下電器産業株式会社取締役会長)

中内    㓛氏(株式会社ダイエー代表取締役社長)

山中  隼瓠奮式会社松屋代表取締役)

福原 義春氏(株式会社資生堂専務取締役)

江副 浩正氏(株式会社リクルート代表取締役)

杉浦 英男氏(本田技研工業株式会社取締役会長)

鬼塚 喜八郎氏(株式会社アシックス代表取締役社長)

 

商品から建物、街の設計まで、

様々なデザインのプロデューサーとして、

民間企業をクライアントとしてきた浜野氏の

人脈のすごさを感じさせる錚々たるメンバーが並んでいる。

 

この著書は、浜野氏が創刊から第4号まで編集長をしていた

デザイン誌「AXIS」に不定期連載されていたシリーズを

もとにして企画された企業トップのデザイン観を、

リラックスした雰囲気の中で、インタビューしたものである。

 

 

すでにこの本が刊行されて32年が経過しているし、

ここに記されている内容が陳腐化している部分ももちろんある。

しかしながら、企業トップがデザインに対して

十分な理解を要する必要性は現在も変わらない。

 

むしろ、長期にわたって経済環境が低迷しており、

消費マインドが乏しい状態が続くからこそ、

どうやって需要を喚起するか、そのポイントして、

デザインを理解することが問われることは必須であろう。

 

例えば、以下のポテトチップス新商品開発を巡る

ニュースを読んでみても、それは明確である。

55年間販売されてきたポテトチップスにおいても、

そのパッケージデザインだけでお客様に、

店頭で手に取っていただきやすい余地があったのだ。

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1707/26/news012.html

 

 

商品に関するデザイン、マーケティングに関するデザイン、

そして、企業イメージに対するデザインなど、

お客様が商品・サービスを選ぶ選択肢において、

デザインが決定権を握っている側面は非常に大きくなっている。

 

もちろん、それはこの著書に記された経営者が

高度経済成長期以降、日本社会の変遷に合わせて、

様々な取り組みを行ってきたからこそ得られた結果でもある。

 

それから30年以上が経過して、IT技術の進展や

グローバルなブランドの進出などが起きているが、

商品・サービスの差別化において、

デザインの力が減少する事態どころか、ますます重要になっている。

 

例えば分かりやすい例を出せば、スマートフォンは多くの

企業がラインナップを行っていても、

日本ではまだまだiPhoneが高い市場占有率を有するのは、

本体はもとよりサービスまで含めたデザイン一貫性に要因がある。

 

この著書の刊行から32年が経過した2017年現在、

ソニー、サントリー、パナソニック、イオン(ダイエーを吸収)、

松屋百貨店、資生堂、リクルート、ホンダ、アシックス、

これらの企業は影響力の変化はともかく、

日本の消費者に何らかの消費行動を促す

ブランドデザインを提供し続けている。

 

一例を挙げると流通業界でプライベートブランドを大きく始めたのは

ダイエーであるが、イオンにおいても大きな収益源であり続けている。

(この原点は、小売りがメーカーというデザインを廃したとも言える。)

 

この本に取り上げられている8人の経営者それぞれ、

デザインについては、企業独自の価値を高めるものとして、

それぞれの視点で重要性を語っているので、

全てを紹介しても良いのである。

それをするとキリがないので、今でもデザインセンスの優れた

リクルートの創業者である江副氏と浜野氏の対談をご紹介したい。

 

(以下、本文197p-198pより引用)

 

江副社長ー

話は変わりますけれども、多少、私の話をさせてもらえば、

ぼくは仕事を始めてちょうど三年目ぐらいの若い時分、

旧中島邸という下宿屋で、酒の味がわかるという連中が

五人ぐらい集まりまして、ビールのブランド・テストを

やろうじゃないかということで、

味覚心理学をやっているやつがいたんです。

 

舌がどの程度わかるか。

それから、温度が上がれば甘味を強く感じるとか、

ある程度下がっても強く感じる。

 

そういう味覚を専門にする心理学の大学院の学生がいまして、

そいつが、それじゃみんなにおれがテストするといって、

当時、サントリーはなかったですけれども、

キリンとアサヒとサッポロを飲み比べしたんです。

 

被験者が五人いまして、全然わからないんですよ。

確率的に見るとだれもがわからない。

みんなわかっていると思っているわけですよ。

おれはこんなのわかるよと言いながらだれもわからないんですね。

 

10回ぐらい何回も何回も回し飲みさせるわけで、

これはキリン、これは何、だんだんわからなくなってくるんです。

確率的にみるとだれもわかっていない。

本人はわかっているつもりでいる。

 

これはやはり宣伝とかパッケージとかいうものが

すごく大事なんだなとその時ぼくは思ったんですね。

 

浜野氏ー

それが原点になっているわけですね。

 

江副社長ー

これはおいしいとかまずいとか思い込んでいるけれども、

すごくそれに付随するお話とかパッケージとか雰囲気とか

いうものがすごく左右すると思うんです。

 

料理屋で「吉兆」というお店がありますけれども、

そこは、これは明石でとれたタイですとか、

京都でできた賀茂ナスだとか、十津川のアユですとか、

話がきれいにできているわけです。

色といい、盛りつけといい素晴らしい。

そういうものでおいしくなるんですな、同じものでも。

 

これが黙ってほかの皿に移して、ほかの部屋で食べたら

うんとまずくなるというか、そういうことないですか。

 

浜野氏ー

まったくそうですね。「吉兆」のああいう盛り付け

というのはフランス料理にすごい影響を与えているんですね。

ヌーベル・キュイジーヌなんかまったく「吉兆」の影響ですよ。

それをまた日本ナイズして、キュイジーヌ・シセイドウ

なんてできたでしょう。

あれの皿なんか西洋皿なんだけども、

いろいろ柄とか色が入っているんですよ。

それにどううまく置くかという、あしらいというのが

入り始めたんです、西洋料理に。だから、食もデザイン・・・・。

 

江副社長ー

そのへんのデザインというのは大事だと思いますね。

 

浜野氏ー

特に日本料理というのはデザインを

ものすごくうるさく言ってきましたね。

(以下省略)

 

 

この対談でも露呈しているように、日本人は日本の文化に合わせて

様々な材料をアレンジしてデザインセンスを磨いてきたこと、

それをうまく現代の企業サービスに生かすことを

稀代の経営者は、欧米の技術革新とともに考えてきた。

 

これは昭和時代から平成時代になっても変わらないはずである。

なぜなら日本人は、様々な歴史文化を自然に感じ、

その精神構造の下で日常生活を送っているのだから、

どれだけ海外の商品サービスが入ろうと、影響を免れない。

 

 

海外から日本を訪れる観光客が増える中で、

日本なりのサービスに満足をしている方は、

そのトータルデザインに魅力を感じているはずである。

 

都会の和食レストランに満足するのではなく、

日本の原風景がある土地で食べる地元の食材に、

おもてなしされた食事に満足を覚えているのだ。

 

多くの人に求められる商品・サービスであれ、

一部の限られた人に求められるものであれ、

トータル的なデザインセンスを持った事業者が提供するものは、

単体しか考えられていないものとは、

大きく満足度が異なってくる。

 

そんな現代では当たり前となった価値観を、

これら9人のデザインセンスあふれる経営者は、

それが当たり前でなかった時期に構築されてきた。

 

だからこそ、32年の月日が経っても、

改めて彼らの言葉に耳を傾ける事には大きな意味がある。

 

私は、この著書を読み終わって改めてそのことを痛感している。

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読書 | 19:12 | comments(0) | - | - | - |
総理の原稿-新しい政治の言葉を模索した266日- 平田オリザ・松井孝治著読了。
評価:
平田 オリザ,松井 孝治
岩波書店
¥ 1,944
(2011-04-08)
コメント:施政方針演説など内閣総理大臣が発するメッセージがどのように作られているのか知りたい方には必読。加えてどうして民主党政権崩壊以降、民進党が再浮上できないのかも理解できる一冊。

政治家の言葉の軽さが色々な点で、

政治に対して不信感を招いているのが現実の社会である。

 

私自身も政治に関わる人間として、

政治家はいかにして言葉を紡いでいるのか、

興味があって、この本を手にしてみた。

 

といっても、私がこの本を手にした理由は、

民主党(現 民進党)、自民党といった政権与党の

党派性という色眼鏡ではない。

 

現憲法下で初めて成し遂げられた

政権党が完全に交代することによって成立した鳩山内閣。

賛否両論ありつつも、それまでの総理大臣が発する

所信表明などとは大きく異なっていたと言われる。

 

鳩山総理の原稿が、

どのような経緯で作られたのかに興味があり、

平田オリザ氏の本を読み、

松井孝治氏のツイッターでの発信を踏まえて、

漸くこの本を手にしたに過ぎない。

 

政権を取った頃からの面影が乏しくなった民進党、

その前身である民主党は、間違いなく自民党に変わり、

日本国を代表して国民にメッセージを発していた。

 

そして、発足当初は政治主導というキーワードとともに、

それまでになかった様々な国会議員主導の変化が起きた。

 

今、自民党政権に戻り、様々な国会のやり取りを垣間見て、

政治主導が大きく進んでいると感じる国民は、

決して多数派ではないのが実態ではないだろうか。

 

 

前置きが長くなり過ぎたが、

本書は、鳩山内閣の総理演説を書き、

官邸のオープン化に寄与した

劇作家で演出家である 平田オリザ氏と、

当時内閣官房副長官を務めていた 松井孝治氏の

対談をまとめられたものが中心となっている。

 

まずは、この対談の本文ではなく平田氏の意見を入れて、

松井氏が纏められた鳩山内閣初閣議の文書、

総理の考え方を示した「基本方針」より一部を引用したい。

 

平成21年9月16日

 

1 本日ここに、民主党と社会民主党、国民新党の連立の下、

新たな内閣が発足いたしました。

 

私は、先の総選挙は、民主党及び友党のみの勝利ではなく、

国民の政治へのやりきれないような不信感、

従来型の政治・行政の機能不全への失望と

それに対する強い怒りが、高い投票率になって現れ、

政権交代に結びついたものだと考えてきました。

 

その意味で、総選挙の勝利者は、

国民一人ひとりであるはずです。

そして、この国民の強い期待に対して、

全身全霊を傾けてお応えするのが、

この内閣の使命であると確信しております。

 

2 今日の日を、日本が明治以来続けてきた政治と

行政のシステムを転換する、歴史的な第一歩にしなければ、

この内閣の意味はありません。

 

そのために、この鳩山内閣は、

「本当の国民主権の実現」、「内容のともなった地域主権」を

政策の二つの大きな柱として、

新たな国づくりに向けて、動き出したいと思います。

 

わが国は、今日から、利権政治と、それを支えてきた

官僚依存の政治システムからの脱却を目指します。

国民主導により、国民一人ひとりが豊かさを実感できる

政策を行う本当の意味での「国民主権」の国家へと転換していきます。

 

また、明治以来の中央集権体質から脱却し、

地域の住民一人ひとりが自ら考え、主体的に行動し、

その行動と選択に責任も負う「地域主権」へと、

この国のあり方を、大きく転換していきます。

 

3 新たな国づくりに向けて、まず、国政の運営を、

官僚主導・官僚依存から、政治主導・国民主導へと

刷新しなければなりません。

 

ただ、私たちが目指す政治は、

「官僚たたき」の政治ではありません。

 

誰かを悪者にして、

政治家が自らの人気をとるような風潮を戒め、

政治家自らが襟を正し、国民の声に謙虚に耳を傾け、

率先垂範して汗をかいていきたいと思います。

 

「政治主導」は、単に政治家が官僚の上に立つ

政治体制ではありません。政治家自らが、

今一度、憲法に定められた「国民主権」の意味をかみしめながら、

国政の大きな舵取りをしていこうということです。

 

配下の官僚諸君にも、意識の変革を促しつつ、

共に改革に取り組み、国家を支える中枢としての

誇りを取り戻していただきたいと思います。

 

(以下省略)

 

内容を見ていくと、どうしてこの後民主党への支持が減少したのか、

そして現在の安倍内閣の支持率が低下していく要因までもが

おぼろげながら見えてくるのではなかろうか。

しかし、それはこの本の要点ではないので触れずに置く。

 

まず、この基本方針を読んで感じることは、

役人的な言い回しを極力省こうと努められている点である。

役人文章になると、右にも左にも捉えられる玉虫色の

表現が含まれていることが多くなる。

 

しかし、この基本方針には、これまでの問題点はこれ、

だから今後このように変えていこうとするという

明確な姿勢がはっきり謳われている。

 

もちろん、内容としては共に仕事をしていく仲間となる

官僚に向けて十分に配慮されているものなので、

国民の側からすると気持ちが良いとは言い辛い。   

 

しかしながら、あくまでも国民の投票行動という意思を踏まえ、

目指すべき政治の方向性を定義し、

それを目指すために官僚の協力を求めるという流れは、

非常に論理的であり、回りくどい表現ではない。

 

平田オリザ氏は本職であるからもちろん、

松井孝治氏も数々の伝統文化に造詣が深いため、

日本人がどのような表現で、人々を惹きつけるかを

十分計算されて書かれている基本方針だと感じられる。

 

また、これまで続いた自民党政権で国民が不信感を抱いたのは

果たして何だったのか、これを提示することも、

その基本方針のポイントであると言えるだろう。

 

 

言葉は人を動かすものである。

特に政治という多くの人々に関わってくる世界に

置かれている政治家という人が発する言葉であれば尚更。

 

しかしながら、逆に言えば多くの人々に影響するからこそ、

多くの人々にとって当たり障りのない言葉を

発されてきて、それに対して有権者が関心をなくし、

政治家に対して信頼性を失っているのも事実である。

 

また、皮肉にもそれを打破しようとして登場した

民主党政権が、大きな結果を残せなかったことも、

何かを期待していた有権者には大きなトラウマとなっている。

 

 

だからこそ、今必要なことは、

改めて言葉の大切さを政治家自らが認識し、

力強い言葉を自らの責任で発することではなかろうか。

 

もちろん、その結果多くの反論があるのは避けられない。

だからと言って、そこで立ち止まっていたら、

まさに成長が伸び悩む日本を変革していくことはできない。

 

今、政治家に発言が求められているのは、

後ろ向きな行動ではなく、前向きな行動を促す

未来を捉えた言葉なのではなかろうか。

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読書 | 23:27 | comments(0) | - | - | - |
あなたの話はなぜ「通じない」のか 山田ズーニー著 読了。
評価:
山田 ズーニー
筑摩書房
¥ 562
(2006-12-01)
コメント:自分の気持ちを他人にうまく伝えられない、そういった悩みを抱く人は多いだろう。その前に、自分自身で自分の気持ちを整理できているのだろうか。まずはそこからしっかり始めてみようというのが山田さんのメッセージである。

先日読み終わった山田ズーニーさんの文章の書き方に続いて、

会話術について書かれたこちらの文庫を手にしてみた。

 

私は、他人様から多様な意見を聞き、

また自分の考えを他者に伝えなければならない

仕事をさせていただいているので、

周囲の人々に自分自身の「想い」を伝えることは、

日々の暮らしにとって、とても重要なことである。

 

自分の想いに嘘をつかずに、他者と通じ合うには?

こういった視点でこの文庫はまとめられている。

 

色々なスキルを使って、自分の想いを押し殺して

他者と接することも可能であるが、

その行為は結局、自分自身に嘘をついており、

他者に対して敬意を払った行動ではないと山田氏は指摘する。

 

まず初めに、自分の想いを他者に伝えるために、

必要不可欠な5つの基礎が紹介されている。

---------

1,自分のメディア力を上げる

---自分の信頼性を高め、他者への影響力を高める。

 

2.相手にとっての意味を考える

---話の相手にとって関係があり、意味がある話をする。

 

3.自分が一番言いたいことをはっきりさせる

---自分で考えて、決め、結果を引き受ける覚悟を持って話を考える。

 

4.意見の理由を説明する

---自分と相手の間にある意見とその理由を説明する。

 

5.自分の根っこの想いにうそをつかない

---自分の根っこにある想い・発言の動機を大切に話をする。

————

 

この想いが伝わるエッセンスの解説を例示しながら、

詳しく解説されているのが、本書ということができる。

特に、著者の山田氏がポイントにされているのは、

文章の書き方でも指摘されていた、

「自分自身が伝えたいことをしっかり考える」ことである。

 

自分の想いを他者に伝えようとするには、

自分の伝えたいことについてもじっくり考える必要があるし、

また、伝えようとする他者の想いにも考えを巡らし、

お互いの意見が交わるような問いを用意することが重要であると、

山田さんは、色々な解説を行いながらその意味を指摘している。

 

 

私自身、他者に自分の想いを伝えることが下手で、

学生時代などメンターとなってくださった方によく指摘された。

「自分の想いを口に出しているようには聞こえない」と。

 

それから紆余曲折ありつつも、他者と横並びであることを

嫌っていた私は、他者との会話の際に、

複数の人が行うような問い、全く他者がしないような問い、

この二つを考えるように努めた事実がある。

 

もちろん、未だにそれが上手くいくこと、失敗すること、

いずれも経験するのだが、少なくとも、

その両面を考えなかった頃に比べれば、

私の会話を聞いてくださった方に、

何らかの印象を与えられるようになったのではと考えている。

 

他者に自分の想いを伝えることは難しいことであり、

できれば自分の意思を伝えないままに行動した方が、

世の中をうまく渡っていけるような気もする。

 

しかしながら、結局自分の想いを他者に伝えずに、

「何か違う」と思ったままで人生を送ることは、

自分自身に嘘をつき、結局自分自身が、

何を目的としているのかを見失ってしまうことに繋がる。

 

著者の山田さんも書かれている通り、

自分の想いが伝わらなくて困ったという「壁」に当たった時、

その人は、どうにかその壁から逃れようと、

もがいていけるチャンスに出くわしている。

 

それを如何に将来の自分自身に役立てようとするのか、

このことこそが、「伝える技術を身につける」ということに

他ならないのではないかと、山田さんは訴えている。

 

他者とのコミュニケーションに悩み、

自分自身を揺さぶられる経験は、自らを大きくしてくれる。

私の過去を振り返ってもそう思うのだが、

山田さんが書かれた本で、そう改めて定義されると、

再び、自分の意見を伝えようとする勉強の重要性を痛感する。

 

 

まだまだ、この文章自体が非常に分かりにくいものであるからも、

本当に発展途上の私自身、自分の気持ちに

整理整頓ができていないことの表れである。

 

拙い言葉でも、他者に自分の想いを発し、

そのリアクションを受け止めながら、

少しずつ「通じる会話」の術を身につけていきたい。

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読書 | 22:21 | comments(0) | - | - | - |
他者に伝わる文章を書くにはどうしたら良いのか?山田ズーニー著「伝わる・揺さぶる!文章を書く」読了。
評価:
山田 ズーニー
PHP研究所
¥ 713
(2001-11-01)
コメント:著者の山田氏は長年小論文の書き方を指導してきた教育従事者である。自分の思いを伝えることは学生にも社会人にも必要不可欠な社会的スキルである。考えが他者に伝わらないと思っている人には必読の新書。

PHP新書「伝わる・揺さぶる!文章を書く」は、

山田ズーニーさんという小論文指導の

プロフェッショナルが記された本である。

 

私がこの著書を手にとったのは、作家の菅野完氏が

ツイッターにてこの本を推奨されていたからである。

「日本会議の研究」というベストセラー著者が勧める、

書き方の本であれば間違いないはず、そう思い手にとった。

 

この本が多くの読者に支持されていることは、

この書の奥付からも一目瞭然である。

2001年に初版が出たこの本は、2017年6月26日に

すでに49刷が行われている。

それだけ長くに渡り、多くの読者を惹きつけている。

(15年も経て版が変わっていない、

つまり本文が大きく変化ないことにも驚き!)

 

まずは、著者の山田さんがこの本を書いた想いを

一番最後に書かれた文面から伝えたい。

————

自分にしか書けないもので、

互いの潜在力が生かされる時、

相手とあなたが出会ったことは意味を持つ。

あなたが書くものは、

相手にとってかけがえのない意味を持つのである。

 

あなたには書く力がある

 

本気でそれを伝えるために私はこの1冊を書いた。

読んでくれてありがとう。

あなたの書いたものに、

私はいつ、どんな形で出会えるだろうか?

————

(上記エピローグより引用)

 

私は、10年以上にわたって、

ブログなどに駄文を書き連ねているが、

他者に読まれれることを前提にして、

ウェブメディアへの出稿を前提とした記事以外、

ほとんど推敲をしないままに文を連ねてきた。

 

このことは、自らが表現する文章について、

十二分に自分自身で考えたという現実を放棄している。

 

山田ズーニーさんが本書で何度も指摘されているのは、

「自らが書く文章を通して、

如何にコミュニケーションを円滑に図っていくのか」

十分に自分の頭で考えてみようということである。

 

孫子の兵法の例えを出すまでもなく、

他者が関係する物事を進めるには、

自らを知って、相手を知らない限り上手くいかない。

 

これはもちろん文章を書くという、

誰かに対して何らかの表現をする際にも当てはまる。

自分自身だけが読むものでさえ、

時間を超えても理解できるような文でなければ価値がない。

 

この本では、文章を書くにあたって、

伝える文を書くにはどんな考え方を持つべきか?

実際にどういった形で文章を書いていくべきか?

さらに他者を揺さぶるにはどうすべきか?

と段階を踏んで具体的に事例を提示されている。

 

入試や採用試験など、具体的な事例も豊富なので、

詳細についてはぜひ本著を手にとっていただきたいが、

エッセンスとして、機能する文章について、

7つのポイントを挙げられているので、ご紹介したい。

 

 

きちんと機能する文章を書くために著者が必要だと考える要件

 

1.意見

ーあなたが一番言いたいことは何か?

2.望む結果

ーだれが、どうなることを目指すのか?

3.論点

ーあなたの問題意識はどこに向かっているか?

4.読み手

ー読み手はどんな人か?

5.自分の立場

ー相手から見たとき、自分はどんな立場にいるか?

6.論拠

ー相手が納得する根拠があるか?

7.根本思想

ーあなたの根本にある想いは何か?

 

この中でも、「論点」「論拠」「意見」が基本となるそうだが、

実際の文面では、論拠などが当たり前のこととして、

意見以外は省略されている場合があるとのことである。

 

 

プライベートなもの、オフィシャルなもの、

文章を書くにあたっては、様々な雛形が存在する。

 

同じように、他者に伝わる文章を書くにあたって、

押さえておくべきポイントがあることを、

山田氏は、この著書で詳しく解説しながら、

なぜ、そういった考えを持つようになったのかを

数々の失敗談を含めて解説されている。

 

 

この著書はタイトルにもあるように、

他者の心を揺さぶる文章の書き方を考察した本である。

 

だからこそ、求められるのは自分の考えがどこにあり、

何を他者に伝えようとしているのか、

自分自身の想いを明確にすることが一番大事なのである。

 

経済環境も、社会環境も、10年前20年前と比べて

大きく変容しつつある日本社会において、

周りの人がやっているように過ごせば良いという

時代は過去のものとなってしまった。

 

だからこそ、自らを見つめるツールとして、

文章を書くことの意味は非常に大きいものであるはずだ。

だからこそ、他者を揺さぶる文章を書こうとすることは、

結局のところ、自分自身を鼓舞する最短のルートなのかもしれない。

 

そんなことを考えさせられた山田ズーニーさんの

エピソード溢れる文章作成術は、

是非ともこれから学生になる人、社会人になる人に

読んでいただきたいオススメの一冊である。

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