ポレポレ東中野にて、オールナイトしてきました。
監督失格』 × ポレポレ東中野企画【性と死と旅】の第二夜の上映です。
前週、「監督失格」を見て、大胆かつ繊細な、感傷的かつ客観的な
平野勝之監督をさらに見たいと思い足を運んでみました。
最初の作品は「由美香」です。
そう監督失格でも主人公となる林由美香さんから付けられたタイトルです。
この映画は平野監督と由美香さん二人で東京から礼文島まで、
自転車旅道中の「エンターテイメント作品」です。
当時不倫関係にあった二人ですが、ドロドロ感は全くなく、
初々しくも、ちょっと複雑な恋愛関係といったところでしょうか。
最初は、平野監督一人で出かけるつもりだった自転車旅行に、
由美香さんが突然同行することになります。
それまで、ほとんど運動していなかった由美香さん、そして精神的にも
そんなにタフでなかった彼女は、旅の始まりから、
自転車を漕いでは涙を流し、ストレスを溜めては酒で散らす。
そんな日々の積み重ねではありながら、1000キロ超を投げ出すことなく、
日本最北の地まで自分の力で到達します。(仙台から苫小牧はフェリーです。)
一方の平野監督は、由美香さんを長く片思いで想い続け、
6年後、久しぶりの再会で付き合うことになり、
思わず溢れる笑みの中、万端の準備で、同僚に見送られ新宿を出発します。
由美香さんは、劇中でも語っていますが、それまで数ヶ月以上、
彼氏と続いたことがなく、どうしても相手のことを想えなくなってしまう。
一方、平野監督は奥さんが既にいることもあり、女性に対しては
熱くなる部分もありつつ、冷静に受け止める度量もある。
そんな大人の恋愛が色濃く表現されている作品でした。
もちろん、この作品自体が、AVの企画という側面もあるため、
たくさんのSEXシーンがあります。
そのシーンの変遷だけ見ても、きちんと二人の関係が見えてきて、
何か複雑な想いを観客に与えるものがありました。
しかし、作品を通して、クスって笑えるところが多々あるのは、
仕事仲間としての信頼関係ができている二人ならではなのかもしれません。
道中で偶然出会う、旅人、トラック運転手、船乗り、
そんな周囲の登場人物も、作品のスパイスになっていて、
思わず旅に出たくなる、そんな作品でもありました。
私が見終わった際に感じたのは、
社会は複雑なんだけれど、たまにはそんな呪縛を解き放って、
自然に身を任せてみるべきなのかも、
って放浪者男子風な感想を持ちました。
こんなだから所帯持てないのかな(笑)
次の作品は、「流れ者図鑑」です。
由美香さんと、礼文島への旅の後「終わった」心を切り替えるべくなのか、
平野監督は、演劇をやっていたことがあり、
まだまだ慣れない映像の作り手である松梨智子さんとともに、
再び北海道に自転車でAV撮影旅行に出かけます。
AV監督としてのデビュー作は、林由美香さんで、まさにプロフェッショナルと
仕事をしてきた平野監督は、その分野の全くの素人である松梨さんと、
仕事をすることに覚悟はしていたと思いますが、
やはりその難しさは、大きいものであったと全シーンで感じる作品です。
一方、松梨さんも平野監督に弟子入りというよりも、女性として好かれたい
という意識が強かったのか、自分の感情を脇におき、
必死にいい女になろうと務めるのですが、どこか空回りして、
そのもどかしさが最後にはどんどん痛々しくなってくる。
端的に言えば、間違いなく重い映画です。「由美香」とは違い、
ほとんど笑えない。ただただしーんとした映画館の雰囲気でした。
平野監督は、当初は目的地すら決めていなったのですが、
結果的に同じ目的地に達したということは、やはり由美香さんの影が
大きすぎるものだったことが、旅の混迷の主因なんだと感じました。
もちろん、この作品には非難囂々なのかもしれません。
しかしながら、松梨智子さんはその後多くの映画作品を世に出し、
役者としても活躍されながらも、負の側面から活動を休止されたことは、
もしかしたらこの作品から流れが始まるのかもしれません。
http://www32.ocn.ne.jp/~bake/robakun_index.html
やはりそこは平野監督は、松梨さんに情が移った瞬間もありましたが、
仕事人としては冷徹であったと言えるかもしれません。
それが、北海道を自転車で旅する最中でありつつ、
AVという本職の制作であったことも、
二人のイライラの要因であったことはまぎれもない事実でしょう。
しかし、この作品は、よい意味でドキュメンタリーなんだよなと、
ふと思ったりもしました。監督がカメラが壊れて、道路に叩き付けるシーンがある
映画なんて、どれだけ存在するでしょうか。
作品の主役に向かって回し蹴りをしつつ、制作意図を裏表から演者に伝える
映像作品はそう多くないと思います。
そういう面からだけでも、価値ある作品だと私は感じました。
うん。ドキュメンタリーの大御所、安岡卓治氏がプロデューサーであることも納得です。
私がドキュメンタリー映画が好きなのは、
観客に何か疑問を与えるものであることです。
まさに、この作品はその代表例であるのかもしれません。
最後の作品は、「白 THE WHITE」です。
平野監督は、実家のある静岡県の浜松市から北海道の礼文島まで、
2000キロ超をひたすら自転車で一人で走破するドキュメンタリーです。
導入部分には、平野監督の奥さんがその準備風景とともに、
ナレーションを行っていますが、あとは、監督の言葉がたまに入るだけ。
ただひたすらペダルを漕ぐ男の映画です。
冬山装備で、東京の自宅にも立ち寄らず北を目指すのですが、
仙台でなんと盲腸になり、手術、入院を余儀なくされます。
ドクターストップ、周囲の警告にも関わらず、驚異的な体調回復と
強い目的意識のもとに、再び北を目指します。
「由美香」では仙台からフェリーに乗りますが、この作品では、
さらに東北の太平洋岸を北上します。
東北地方太平洋沖地震による津波によって壊滅的な被害を受けた
田老町などの場所が次々に登場します。
そのリアス式海岸の道のりはひたすらに山道であり、
人影、車の通行もまばらな中を、雪の中ただ北へ向かう。
そして、北海道に入ってからは、記録的な豪雪の中を、
民家の庭先にテントを張り、飼い犬と戯れる監督は、どこか可愛い。
休憩先の旅館で出会った従業員の女性スタッフに恋をしてしまうのも、
その彼女をイラストにする監督も、ふいに観客の笑顔を誘ってくれます。
そして、道北を疾走するラストは、ただひたすらに吹雪舞うなかを、
自然の音だけで、たしかに何も語るものの必要ないシーンでした。
(オールナイトの最後でちょっと試される大地でした・・・。)
うん、感想はまさに「男の映画」でした。
同じ目的地(礼文島)、同じ撮影方法(自転車に乗りながら撮る)
だけれども、その作られる前の想いも、その行程も全く異なり、
見るものに与えるものも喜怒哀楽大きく括っても全く異なる。
まさに、ドキュメンタリーの醍醐味だなと思ったオールナイトでした。
これらの作品には、たくさんの旅人が登場します。
彼らは、自転車だったり徒歩だったり、バイクだったりで旅をします。
しかし、私たちも、もちろん人生という旅の途中にあるわけで、
目に見える彼ら彼女らに憧れる感覚はどこかしらにあるのではないでしょうか。
「由美香」の途中で、平野監督が、AVを撮ることが目的な自らを省みて、
すべてを投げ出して彼らのように旅をしてみたいと語る場面があります。
私も、そんな瞬間は多々存在しました。
けれども、実際には彼ら旅人も投げ出せない何かがあるからこそ、
どこかしらの目的地を目指し続ける訳で・・・。
うん、でも旅に出たいね。
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評価:
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マクザム
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(2006-12-22)
コメント:大人の恋をしている人には見ていただきたい、そんな印象です。
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