黒木町日記

実家のある福岡県の黒木町。2010年2月1日をもって、
八女市に吸収され、名前も聞く機会もめっきり減りました。
ちなみに、管理人は東京都暮らしを経て長崎県在住です。
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記者たちの日米戦争 木村栄文著 読了
日本とアメリカ、第二次世界大戦開始から終戦まで、
新聞を中心とするメディアに関わる気骨ある人々を追ったルポルタージュです。

木村栄文氏は、福岡にあるRKB毎日放送のテレビディレクターで、
この著書は番組制作のための取材を通して、多数の関係者のインタビューを
テレビ向けに行われたものを再構成された内容になっています。

文章の始まりは、1945年9月2日に東京湾上の戦艦ミズーリ号で行われた
降伏調印式での日本の疎外された光景に始まり、
この景色は、1991年の湾岸戦争後、多数のアメリカからの批判を浴びた
日本の姿を重ね合わせるところから、本題に入っていきます。

この著書を通して、主人公であるのは、
ワシントン州シアトルの沖合10キロに浮かぶ
ベインブリッジ島の週刊新聞「ベインブリッジ・レビュー」の社主兼編集者である、
「ウォルト・ウッドワード」です。

彼は、この島の住民の生活に関することのみに注力した
紙面を作るための編集方針を貫き通し、人口4千人のなかに暮らしている
日系人274人の生活が日米戦争勃発によって大きく変化することに強い危惧を抱きます。

そして、日系人を含め、一人ひとりの島民の生活が
合衆国憲法に照らして、尊厳あるものであるために、
新聞の存亡をかけて、戦時中の雰囲気に流されない記事を発表し続けます。
それはこの一文から始まります。
以下引用です。
------------
「ベインブリッジ・レビュー」社説 1941年12月8日号外新聞
”素直な意見”
「もしも、予期されざる事件によって発生した非常事態に頭をかかえ込んでいる
土地があるとしたら、さしずめ1941年12月8日、月曜日の朝の
ベインブリッジ島がその最たるものであろう。
いま、この事態を控えめに語る暇はない。国家と強い絆で結ばれた
50世帯、3百人の島民は昨日、いきなり苦境に立たされたのだから。

偉大なるアメリカ民主主義なるものは、
よく言ってものろまな動物みたいなものである。
われわれはそのあたりをうろつき、べらべら喋り、労働ストをもてあそび、
積極的労働意欲に欠け、いろんな点で非効率な存在である。

問題は、この”のろまな動物”ががむしゃらに、ヒステリックに、
日本人を祖先にもつ人びとに憎悪の感情を向ける危険が多いということである。

大衆の集団ヒステリーは、日系人がアメリカ国民にして国家に忠実であり、
かつ祖先の国とは何の関係もたぬ島民である事実を無視してしまうおそれがある。

さらに本誌が訴えたいことは、日系人は、先の大戦時のドイツ人のように
国籍を変えたり、変名したりして危難を逃れる手段をもたないということである。
まちがえてはならぬ、彼らは日系のアメリカン人である。
われわれが戦っているのは日本である。

日系人に訴えたい、あなた方は忠実なアメリカ人として、
いままで以上に忍耐力を発揮してほしい。
厳しい監視の目も覚悟しなければならない。
このことを恨まず、受け入れなくてはならない。

本紙はこの島の一般住民に告げる。
この島には一見、敵に見える顔立ちの人びとが3百名住む。
だが、よく考えてほしい、彼らがわれわれに爆弾を落としたというのか。
彼が立派なアメリカ市民であることは、すでに実証されている。
国歌に忠実な彼らの家庭から、すでに六名もの子弟が兵役についているではないか。

島民よ。いまこそ非常事態に冷静に対処しよう。
そして、この試練の日々を生きよう。
かくて戦い終えたとき、アメリカに忠誠を誓ったものどうしは、
互いに見交す日を迎える。
自由の故国の、空高くひるがえる星条旗をともに守ったものとして」
------------(引用終わり)

長い文章でしたが、途中で終えたくなかったので、全文引用しました。
木村氏の前で、上記の文章を朗読したウッドワード氏はまぶたをうるませたそうです。

戦争というもっともジャーナリストが、
その仕事の本質を追及される時期、そして数多の障害訪れる時期に、
日米で国家の、民衆の圧力にめげず、
自らを貫く民主主義国家における人びとの存在意義を説いた
ウッドワード氏をはじめとして、新聞人を取り上げたのが本著です。

戦争というものは、さまざまな要因がありつつも、
人々を画一的な行動に駆り立てるスローガンに収斂させる動きになります。
それは、メディアに流れる言葉にも当てはまります。

だからこそ、その流れに乗らない人びとには、非国民のレッテルを貼られ、
自らの生命すら危機に陥る状況になってしまいます。
彼ら、新聞人は、その生命の危機をもかけ、
新聞というプロとしての誇りを追求し、利害関係者の圧力にも屈しませんでした。

翻っていま、2012年の世の中で、特に日本において、
自らの責任をもって、人々のあり方を説いているマスコミ人がいや、メディア人が
どの程度存在しているのでしょうか。

木村氏は、その点をこの著書をとおして、訴えたかったのではないかと、
傍目の非業界人としては、読了感としての想いです。

しかしながら、メディアを作っているのは、その内部の人だけではなく、
それを受け取る、我々一人ひとりの市民なのでもあります。
だからこそ、常に社会の本質的な問題はどこなのか、
市民としても、その声をメディアに求めて行かなければなりません。

アメリカでは、その動きが盛んだったからこそ、
ベインブリッジ・レビューのような新聞社が長らく存在したわけです。
(ウッドワード氏引退後廃刊されました。)

この著書をまくらとして読みましたので、次は主役である番組の
「記者それぞれの夏 〜紙面が映す日米戦争〜」を映画館でみたいと思います。

JUGEMテーマ:ノンフィクション
評価:
木村 栄文
角川書店
---
(1991-12)
コメント:戦争、メディア、語られているのは第二次世界大戦時期の話ですが、指摘は現在にも十分に当てはまる話になっています。

木村栄文 | 22:14 | comments(0) | - | - | - |
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