黒木町日記

実家のある福岡県の黒木町。2010年2月1日をもって、
八女市に吸収され、名前も聞く機会もめっきり減りました。
ちなみに、管理人は東京都暮らしを経て長崎県在住です。
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「理想の死」1905年6月22日 菊竹六皷 福岡日日新聞論説
以下文章は、木村栄文著「記者ありき」より引用。
どうしても、このブログに綴っておきたかったので、メモ代わりです。
 
「花の下に春死するも理想の死なるべし、
巌頭に所感を書して飛瀑に投ずるも理想の死なるべし。
されど、かくの如きのいわゆる理想の死なるものは、世を棄て世に棄てられたる、
要もなき望みもなき出家者流の虫のよき注文のみ。
宇宙と人生と社会と人間とを誤解悲観したる末の自暴のみ。
風流はあらん、同情は価いすべけんも、光輝ある尊敬すべき理想の死にはあらず。
社会は空想にあらず実際なり。人生は素見にあらずして真面目なる一大目的を有す。
この真面目なる人間の実際社会における理想の死とは、正にその本務に斃れ、
職務に殉ずるものなるべからず。
人、必ずしも寿命ならずして死すをも須いず、ただ高尚優婉なる理想に生くるべきのみ。
然れども死せば、願わくば理想の死を死なむ。
吾人に突如としてこの言あるは他なし。吾人は我が福岡において、
近く四日以前において、光輝ある崇高なる理想の死を見たればなり。
鉄道踏切の一少女お栄によって示されたる一例が、吾人を感激することの
あまりに劇しければなり。そも少女お栄とは誰れ、
而して彼女は如何にして死したるか。請う、少時事実の概要を語らしめよ。
少女お栄は福岡市外堅粕村松園の鉄道踏切に旗振りを務めとする
山崎某の次女に生まれたり。彼が崇高なる死の実例を示したる六月十七日は、
あたかも少女の母某が病死後三七日の仏事を営みし日とて、
父と姉とは仏前に参じて在らず、すなわち今年わずか十一の少女お栄は
健気にも紅白の旗採りて、その日信号の務めには就きたあるなり。
同日、午後六時三五分、篠栗行列車が黒煙をあげて進み来たりしとき、
少女は驚けり、線路に通行する人あるを認めたり。
かかるとき人と列車とに注意し警戒するは、正に少女が父と姉の当面の職務なりしなり。
而して、父と姉とにかわりてその務めにつきたりし少女が双肩の重任なりしなり。
彼女は呼べり、旗十字を振りたててつつ呼べり、列車来たる!列車来たる!
危険なり、避けよさ避けよと大声に呼べり、しかれども何事ぞ、
人はなお知らざるもののごとし。
列車は容赦なく轣轆として来たる。今は猶予すべきにあらず、
少女はたまりかね身を躍らして第三踏切より第四踏切に進み行けり。
旗振りたてつつ、小さき声を振り絞りつつ、大胆にも進み行きたるなり。
列車来たる、危険なり避けよ避けよと旗振りたてつつ、
小さき声を振り絞りつつ進み行きたるなり。
少女は人を危険より救わんとして、身の人よりもなおさらに
危難に瀕せるを忘れたりしなり。否な、彼女は自己の危難を念とするには
あまりに職務に忠実なりしなり、あまりに人を救わんとするに急なりしなり。
皇天に謝す!彼女の最後の一声はついにひとりを惨死より救えり。
しかれども何事ぞ、彼女は遂に職務に斃れぬ。
行先長き彼女は、わずか十一年の生涯をもってその生命を未来に移せり。
吾人が筆に心悸を震わしつつ、一篇、理想の死と題して世人に紹介せんとする
少女お栄が高崇なる死の顛末はかくの如し。
吾人は、かつて英文読本において、少女ケートの伝を読んで
小さき胸を躍らせたることあり。而してこの読本を有する国民を羨ましことあり。
しかれども、今やさらに心悸の劇するを覚えつつ、
眼前の事実をとってわが福岡県民とともに世人に誇りうるを悦ぶ。
可憐なる一少女お栄を有したりしことは、永遠にわが福岡県民の誇りなり。
広瀬中佐を出さざりしことは決して福岡県民の恥辱にあらず。
東郷大将を出さざりしは福岡県民絶大の恨事にはあらず。
しかれども、一少女お栄を出したりしことは福岡県民永遠の誇りなり、名誉なり。
ああ、少女お栄!記者不幸にして口唇韻なく、襟懐また詩なし。
晦渋の筆ついにこの一大文章一大詩篇を眼前にして、
これを美化し、詩化し、讃美謳歌するあたわざるを憾む。」
 
踏切事故で父と姉の代理を務めて、信号手を代理して亡くなった
十一歳の少女の事故記事を知り、まだ論説担当して間もなかった、
菊竹淳が記した論述記事です。
木村栄文氏も諳んじて言えるくらい何度も目を通したそうです。
肝に銘じていたいと思います。同じ福岡県の人間としても。
JUGEMテーマ:ノンフィクション
評価:
木村 栄文
朝日新聞社
---
(1997-05)
コメント:こんなメディア人が存在したことだけでも知ってほしい。

木村栄文 | 00:29 | comments(2) | - | - | - |
コメント
from:   2016/07/18 6:11 AM
菊竹六皷は、命を省みずに職務に忠実であった少女を取り上げることで、鋭く政治家及び社会風潮批判をしています。
これこそがジャーナリストの鑑といえる文章ですね。
from: 深沢 清   2016/07/17 2:14 PM
11歳のお栄の気持ちを察します。これは中々できないことです。


黒木に行ったのか、用心して帰っておいで。
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