黒木町日記

実家のある福岡県の黒木町。2010年2月1日をもって、
八女市に吸収され、名前も聞く機会もめっきり減りました。
ちなみに、管理人は東京都暮らしを経て長崎県在住です。
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社会的共通資本 宇沢弘文著 読了
評価:
宇沢 弘文
岩波書店
---
(2000-11-20)
コメント:読書前提として、若干の経済学的知識はあったにこしたことはないだろう。しかし語句を知らなかったとしても現在の社会的課題を身近な話題を含めて取り上げられているために決して読み手は選ばない経済の本である。

9月18日、東京大学名誉教授の宇沢弘文先生が86歳でこの世を去られた。
私は、経済学部卒業ながら、恥ずかしながら先生の論考は一切知らず、
ニュース記事を目にして、積んだままであったこの本を手にした次第である。
まず結論から言えば、この先生はまさに経世済民に取り組んだ方だったとこの一冊で痛感した。

宇沢氏は理学部数学科を卒業した経歴からもってして、数理経済の分野で、
世界に名だたる業績を残し、ノーベル経済学賞の候補として名を挙げられた方である。
しかしながら、この著にあるように、大学に閉じこもらずに、
市井の人に接し、生きた経済を考えて、それを再び理論的に論考する生涯を送った。
どうして大学という場所に閉じこもらなかったのか、ヒントはこの著書にも綴られていた。

以下本文より引用。
――――――
個人的体験になってしまうが、私は旧制一高で三年間の寮生活をおくった。
そこではじめて農村出身の友人を多く知って、人格形成の過程で大きな影響を受けた。
当時、旧制高校では、比較的農村出身の生徒の比率が高かったが、一高も例外ではなかった。
それまで都会の小学校、中学校で、偏った性向の友人たちの間で育った私にとって、
農村出身の友人達の多くがもっていた大らかな人間性、たくましい生き方、
そしてことがらの本質を鋭く見抜いていく知性に、ほとんど衝撃に近い印象を受けたことは
いまでも鮮明な記憶として残っている。
私自身研究者としての道をえらんだわけであるが、
私に研究者としてのなんらかのものがあるとすれば、
その人格的基礎は、旧制高校のころ、農村出身の友人から受けた、
この清冽な影響にあるように思われてならない。

私の、この個人的体験をそのまま一般化することはできないにしても、
農業のもつ特性からおしはかって、農村の場で形成される人間的な雰囲気からは、
私がかつて受けたような強烈な印象を与えるような
若者たちが比較的多く育つのではないだろうか。
――――――
そう、宇沢先生は数理的な経済理論を極めるだけではなかく、
常に「人間」という視点に立って経済を考えることを忘れなかった。
自然に活かされている人間があって初めて、経済活動が成り立つということに。
その視座を基点として、この著書のテーマ「社会的共通資本」を、
農業、都市、学校教育、金融、地球環境というテーマで考察されている。

社会的共通資本というは、この著で以下のように定義されている。

社会的共通資本は、一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、
ゆたなか経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、
人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを
可能にするような社会的装置を意味する

社会的共通資本は決して国家の統治機構の一部として官僚的に管理されたり、
また利潤追求の対象として市場的な条件によって左右されてはならない。
社会的共通資本の各部分は、職業的専門家によって、専門的知見にもとづき、
職業的規範にしたがって管理・維持されなければならない。

社会的共通資本は自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の
三つの大きな範疇にわけて考えることができる。
自然環境は、大気、水、森林、河川、湖沼、海洋、沿岸湿地帯、土壌などである。
社会的インフラストラクチャーは、道路、交通機関、上下水道、電力・ガスなど、
ふつう社会資本と呼ばれているものである。
制度資本は、教育、医療、金融、司法、行政などの制度をひろい意味で
資本と考えようとするものである。

宇沢氏は、神の見えざる手にすべてを委ね自由競争を志向する新古典派経済理論は、
根本的に公平性を欠き、不安定を醸成する仕組みであると疑問を提示し続けた。
自然環境の上で活かされている人間が、どのような仕組みで相互扶助して、
経済的な人間生活を送っていくべきかを
社会的共通資本という考え方で考察したのがこの論考である。
日本で蔑ろにされている農業、教育、環境保護、金融規制をテーマに上げているのも、
政策的な人間性の欠如に強い危機意識を持った宇沢氏ならではだろう。

社会主義も、資本主義も、様々な限界があると叫ばれてからかなりの日時が経つが、
それを超越して、社会の安定を志向するような仕組みは経済学からは生み出されていない。
宇沢氏もそのことを強く感じ、どういった考え方が現代の不安定化した
社会に求められているのかを探求した形跡がこの著書からも窺える。

彼は亡くなってしまったが、彼が遺した課題は、まだまだこれからの
世代の人間が、真摯に向き合っていかなければならないものである。
趣味は山歩きだった宇沢氏に習って、自然と触れながら、目指すべき社会の姿に
思いを馳せる時間を持ちたいと強く感じた素敵な新書であった。
JUGEMテーマ:経済全般
読書 | 09:43 | comments(3) | - | - | - |
コメント
from: 深沢清   2014/10/05 5:26 PM
田を耕すをカルチャーというからのォ〜・・・
from:   2014/10/05 1:53 PM
農村が人間性を育てると、世界最先端だった経済学者が言うところに意義があります。
from: 深沢清   2014/10/05 1:43 PM
中々よか書物の紹介であります。
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