黒木町日記

実家のある福岡県の黒木町。2010年2月1日をもって、
八女市に吸収され、名前も聞く機会もめっきり減りました。
ちなみに、管理人は東京都暮らしを経て長崎県在住です。
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技術者たちの敗戦 前間孝則著 読了。どうして日本組織は戦いに負けやすいのか?

私自身は技術者ではないし、
技術者と一緒になって働いたこともないけれども、
技術で世の中にないものを作り出そうとする人には、
非常に魅力を感じる。


何故ならば私には絶対にできないからだ。

ホンダジェットの開発についての著書を読んで、
ジェットエンジン開発者であったその視点の鋭さが気に入って、
前間氏の本を再び手にしてみた。


この本は、戦時中から戦後を生きた技術者たちに
前間氏が直接インタビューをしてその功績を綴ったものである。

 

三菱重工にて零戦を作った「堀越二郎」、「曾根嘉年」
C62蒸気機関車、そして新幹線を作った「島秀雄」
画期的な造船法を編み出し、後にNTTを民営化させた「真藤恒」
海軍にレーダー開発に携わり、後にNECなどで研究開発を率いた「緒方研二」
戦時中にジェットエンジンを試作し、後にホンダF1世界制覇を導いた「中村良夫」

 

これら6人の戦時中から戦後にかけた開発史と、
彼らが籍を置いた企業に関するエビソードがあふれた著作である。


ただ、事柄を淡々と紹介するだけではなく、
どうして彼らが世の中に知られるような物事を生み出せたのか、
その要因分析も明確で、現代社会に通じる考え方も提示されている。

 

それぞれのエピソードを紹介するときりがありませんので、
技術者について、もっとも本質的な指摘をされている部分を引用し、
前間氏の問題意識の一端をご紹介したい。

 

(以下、第4章「なぜ日本の「電探」開発は遅れたのか』より引用)

現在でもそうだが、基礎研究段階を経て
実用的な製品開発へと向かう過程でよく問題となることがある。
それは研究と具体的な製品開発とは仕事の性格が異なるということだ。
それだけではない。

 

基礎研究を担う研究者と製品開発(モノづくり)を
担当する技術者の性格も得手不得手も、能力の発揮の仕方も、
重きの置き方もまた、不思議なほど異なるのである。

 

乱暴にいってしまえば、研究者は理論的、原理的あるいは
現象的なことそのものには興味をもつが、
そこで発見された新しい成果を利用して、具体的な製品をつくるとか、
チームでまとめあげるといった実用化の作業となると、
あまり興味を示さない場合が少なくない。

 

もっといえば、抽象的で空想的なことを思いめぐらせて、
計算したり実験したりして理論を明らかにすることは好きでも、
生産設備を使ったりして実際に具体的なモノづくりのため、
チームワークを尊重して、まとめあげる段階になると
とたんに興味を半減させ、また不器用で、
機転が利かず、なかなかうまくいかない場合が多いのである。

 

その人のもともとの性格もあるだろうが、
仕事が人間をつくっていくというか、
いつの間にか仕事に対応した性格を身につけてきて、
興味の対象や重きの置き方のちがい、
それに勘の働き方や得手不得手がどうしても出てくるのである。

 

このため、両方の資質を兼ね備えている人物は少なく、
餅は餅屋に任せるべきであるというのである。

ところが往々にして、これがなかなか難しい。
バトンタッチする時期が、早すぎても遅すぎてもいけない。

 

その時期を誤ると、結果として開発が遅れたり、失敗を招いたりする。
だから、研究者と開発技術者との役割分担、
あるいは前者がいつの時点で製品開発を担う後者にバトンタッチするか、
そのタイミングが重要であるといわれている。

(引用終わり)

 

電探というのはレーダーのことであり、
アメリカやイギリス、そしてドイツと比べても、
第二次世界大戦中の日本軍のレーダー技術開発体制は
著しく遅れていて、戦局の明暗を大きく分ける結果となった。

 

航空機による攻撃が中心になったことイコール、
レーダー探知技術が発達しているからこそ、
遠隔地に対して効果的に爆撃を行うことができる。

そんな今となっては当たり前の事実であるが、
戦時中の日本軍は、頭脳の追求を求める体制を作ることなく、
とにかく敵に向かって攻撃を行えば良いという
「攻撃は最大の防御」という思想に囚われすぎていた。

 

もちろん前提としては海軍、陸軍の研究連携ができていない、
研究所での想定過程と現場での運用過程の連携ができていない等、
様々な要因はあれども、虚心坦懐に勝つためにはどうすれば良いか、
その冷静さを欠いたまま闇雲に戦争を行なっていたことが、
最大の電探開発の遅れ、そして敗戦の要因であるようだ。


時は、それから70年以上が経過し、
現在は戦時下ではないし、日本が積極的に他国との
戦争に足を踏み入れることはすぐにはないだろうが、
周辺には武力で領土維持を図ろうとする国が存在している。

 

ミサイルが飛んでくる可能性がある現実に、
安全な建物に避難してくださいと対処療法的に政府が呼びかける現実を見て、
レーダー探知の失敗事例を嗤うことができるのだろうか。

 

我々日本人は、感情論によって物事を判断する時、
多くの場合は、痛い目にあってきた歴史を何度も繰り返している。
いや、別に日本人に限らず人間が形成する組織はそうかもしれない。


もう少し、客観的なデータを重んじて、
自らの創造性を信じ、他国との開発競争を乗り越えようと奮闘する
技術者、科学者の声に耳を傾けようとすることが、
改めて日本人の底力を発揮するために必要なのではないか、
前間氏のメッセージは、私の胸にとても強く響くものであった。

JUGEMテーマ:自分が読んだ本

評価:
前間 孝則
草思社
¥ 886
(2013-08-02)
コメント:あの国は独裁国家だ、そうレッテルを張る前に、冷静にミサイルを開発する仕組みを研究することからしか戦争は防げない。それをこの本は伝えてくれる。

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